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山行革命
山行革命
淡海
こんにちは、淡海(タンカイ)と申します。
山歩き、その道具類や考え方、精神論、野宿の方法、歩行禅から野グソまで「山は登るだけでは無い」事を色々書かせて頂きます。
本業、フリーライターです。

第百五話 『重金属』

14/04/11

こんにちは、淡海です。

音楽を聴きながら山を歩くのは、たいへん趣深いものがあります。
山のなかでは、ほのぼのとしたピースフルサウンド。
というのが世間一般の定説となっているようですが、答えはノーです。

山歩き音楽はヘヴィメタルであります!

忌み嫌われ、自然のかけらもないガチムチな重金属音。
山に音楽を合わせるという保守的な思考ではなく、山と相反する音楽を享受することで、さらに山の本質を理解するという、自分で書いてて意味不明な結論に達しました。

たとえハイキングであっても死ぬ可能性がある以上、戦いなのであります。
己を奮い立たせるヘヴィメタルを耳に突き刺すと、いわゆる勃起率が上昇し、いわゆる勃起角度と、いわゆる登坂斜度の数値がみごとにマッチします。
その勃起角度および登坂斜度の数万光年延長線上には宇宙が存在し、山を登るという行為の次元を超え、宇宙に近づくという超歩行が実現します。

イヤホンで軽量化するのは言語道断であります。ズビズビに重くてパワフルなヘッドホンを付けて、小川のせせらぎや小鳥のさえずりまでもを遮断し、真空世界を作り上げてください。
ヘヴィメタルお得意の勇ましいフレーズ、"イントゥーザファイア"や、"ユーガッタパワー"が、人間の洗剤能力を引き出します。漢字変換を間違えましたが、そのまま進めます。
そして、人差し指と小指を立ててトレッキングポールを握ります。
Tシャツの袖なんかもナイフで切っちゃってください。
体温調節のため、舌を出したまま歩くとよいでしょう。

さあ、ヘヴィメタル登山のはじまりだ!


【重金属歩行音6選】

Heresy / Paradox (1989)
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登山口に立ち、靴ひもを締め直すときは独国鞭打重金属音のパラドックス以外は考えられません。登る前の儀式として気合いが入ります。


Prowler / Iron Maiden (1980)
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歩きはじめは、ポール・ディアノ時代の鋼鉄の処女が鉄板です。
貞操を守って安全な山歩きを!


Imperiled Eyes / Annihilator (1990)
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アナイアレイターの男根をイメージさせるテク二カルなリフは、緩急をつけることで歩行と休憩の時間をトレースし、海綿体に集中してしまった血液を全身に拡散流動させる作用があります。はじめから海綿体に血液を集中させなければよいのでは? というご意見をいただきそうなものですが、山に性を感じなければ山を登ったとは言えないと思われます。


Timeless Cell Of Prophecy / Heathen (1991)
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ヒーゼン。この打てなくて2軍落ちし、数ヶ月で帰国する外国人打者のような名前だけで勇気を与えてくれます。


(My Favorite) Nightmare / Metal Church (1984)
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就寝前は、メタルチャーチの『(私の好きな)悪夢』です。肛門に熱したコールタールを流し込まれるような深い眠りを誘います。


Pentagram and Crucifix / Christian Mistress (2012)
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女子重金属音は、お洒落でカラフルな山ガール必聴です。休憩時にかわいいバンダナで汗をふきつつ、木陰で痰を吐きながら聴いてるとキュートです。

ヘヴィメタルとかけまして、山登りと解きます。
その心は。
どちらも先の展開が読めません。

本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第百四話 『登山靴』

14/02/13

こんにちは、淡海です。
たいへんご無沙汰しております。
寒いですね、いかがお過ごしでしょうか。
久々の山らしいタイトルに震えています。

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以前、ZERO MAGAZINE代表様から誕生日にいただいたGalibierです。
ソールが経年劣化によって剥がれてきたので、修理へ。
町の修理屋さんへ持って行ったのですが、両足で5000円というなかなかの金額を提示されたので、とりあえず店を出ました。

で、ぶらぶら歩いていると、グランドカオスな修理店を発見。

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中にいたおじさんに靴を見せると、
「そやな、1000円。3日だけ時間くれへんか?」
と、いわれたので、迷わず依頼。
"3日だけ時間をくれ"というフレーズに、いかにも仕事を依頼した感がビリビリと走りました。
じゃあ、お願いしますと靴を渡すと、また3日後に来てくれとのこと。
控えみたいなものとかはないんですか?
と聞くと、
「もう顔おぼえたからいらん。控えとかないねん。
 あと、これ山で履くねやろ?裏にビス打っといたるわ」
と。

おそらく、どこかの店舗で頼むと、自分が紙(控え)による識別をされ、マニュアル通りの流れで預けることになるのでしょうが、ここグランドカオスは、おじさんのブレインに控えられたのであります。
"商魂"を感じずにはいられませんでした。

3日後、できあがりを楽しみにグランドカオスへ。
ソールの密着は申し分なし。

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ビスを打ってくれるというので、てっきりソール用のそういったものがあると思ってたのですが、裏を見ると1寸ほどの釘をめった打ちに施してくれていました。
なんとも漢らしい仕上がりです。

うれしさのあまり、代金1000円に加え、チップとして1000円の合計2000円を払いました。
「ありがとうございます」
と、深々と頭を下げられ、自分も深々と頭を下げる。
あらゆる支払いが電子化されてゆく現代、お金を払って清々しい気分になることって減ってきたのですが、ここでのやり取りは爽快でした。
これからも靴の修理はグランドカオスへ持ち込もうと思います。

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最後に、作業場の写真を撮らせていただきました。
ビジネス街の一角にある、一畳の宇宙。
革と靴墨の香りが渦を巻いています。
営業マンからOLまで、ひっきりなしに来客がありました。
まさに、日本経済を足元から支えてきたといっても過言ではございません。

本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第百三話 『迷彩』

13/12/08

こんにちは、淡海です。

最近は、仕事帰りにそのままナイトハイクで山を登り、山頂で寝て家へ帰るというエクストリーム退社を心がけています。
ちょっと寄り道、ではなく完全なる寄り道。
今年もテントレスでがんばってたのですが、いよいよ寒いですね。

そろそろテントが必要だなと思い、押し入れから引っぱり出してきたのですが、加水分解で2張りも瀕死状態となっていました。
とりあえず、この同志たちにはお休みいただくことにして、ニューハウスを電子カンピューターで模索。
テントは高いものなので、どうにか安くすませることはできまいか。
と、思考錯誤してましたところ、mont-bellのカモワッチテンチョなるものが私を誘惑したのであります。

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8200円で家が買えますよ。
いい時代です。
足をまっすぐ伸ばして寝ると、つま先が外へ飛び出ちゃいますが、足裏にカイロを貼れば解決です。

さらに、

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ポンチョにもなります。
どうですか、このいざまは。
分かりますか?  見えてますかね?

迷彩の真価は自然と同化して"見えない"ことにあらず。
ポンチョとして活用することにより、完全にアブナい生命体へと進化します。
想像してみてください。
これが前からノシノシと歩いてきたらどうしますか?
おそらく"見なかった"ことにするでしょう。
イコール、迷彩としての役割を完全に果たすこととなります。
まったく素晴らしい製品です。

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私は、このテンチョをフルに使いこなし、どこにいるのか分からないという究極のハイカーを目指していこうと思う所存でございます。
山の景色の一部が少しゆがんで見えたら、私がいると思ってください。

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石は投げないでください。

本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第百二話 『釣志』

13/10/22

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こんにちは、淡海です。

中国のことわざに、

「一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい」
「三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい」
「八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい」
「永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」

というものがございます。

なんとなくだった釣りが、すこぶるモルヒネのごとく中毒性を発し、
魚死すれば、淡海死す。
トラ、トラ、トラ。
という境地にまで至りました。

かつて、釣り糸を垂らして魚を待つなぞ退屈の極みであると思っていたのですが、ことルアーフィッシング(主に大口黒魚)における魚と人間の壮絶なる頭脳戦が、いまさらながら実にまぶしいのであります。
太古から存在する魚類と、生物の最終系ホモサピエンスのキャットファイト。
気圧と天候、気温と水質、地形と風向、魚の補食時間と趣向、あらゆるデータを脳で走らせ、肌で舐めながら投入すべき疑似餌を選出し、撃つ。

多くは外れる、しかしたまに当たる。
水中を想像し、竿を操作する行為は、エレベーターでヒップハングしたボトムにパンテイラインを浮かび上がらせた女性の後ろに立つことと似ています。

この中身はどうなっているんだろう?
想像通りなのだろうか?
お顔はいかがなものでございましょうか?
そのヒールから察するに、白ではございませんな?
ラインが見えないということは、テイバックでございましょうか?
穿いてないパターンもございますか?
ことによっては買い取ってもようございます?
パンツ、パンツ、パンツ。

ここで興奮して肉の竿を振ってしまえば御用となります。
話を釣りにもどします。
もどさなくてもいいのですが。

とにかく、超自然を読み取った瞬間のエクスタシーはエロスにて得られるアクメより高し、であります。
釣りにおける想定と結果の繰り返しが人生に深みを与えるのではないでしょうか。
ビジネスマンの方はブレイクスルー思考の実践になります。

私は船に乗船してのセレブレティあふるる釣りは性に合わず、毛針で英国紳士的に攻めるのも堅苦しい。
野池であります。
田んぼや畑に点在する庶民的な野池のいざまはプロレタリア最下層の私にベストマッチです。
野池は中学生アングラーのホームでありますが、話してると実に学ぶことが多いです。

は、いま気付きましたが、自分が中学生のころ近所の池で釣りしてる変なおっさんっていましたね。
自分はいまアレになってるわけです。
立派な大人になるのも難しいですが、変なおっさんになるのも難しいと思います。

ともあれ、野池釣りを手に入れたので新たな野宿の名目ができました。
野池で野暮な野宿して、早朝から目覚めの一投を振りかぶっていきたいと思います宣言!
使用ルアーがどうとか、今日のロッドは何とか、大物狙いだとか、そういったことを発表することに興味がございませんので、いままでの山行同様、偏流した釣行日誌を記していければと思っている次第です。

ただ、冬は間近であります。
アパッチ魂をつかいノーテントでがんばります。

本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第百一話 『事師』

13/08/25

こんにちは。
たいへんご無沙汰をしておりました淡海です。
本日は少し下世話なお話ゆえ、清廉潔白な方はご注意くださいませ。

オナニーというものは。
枯渇した脳髄に潤いをあたえ、想像の華に電気を走らせる必要不可欠なアクションであります。

それにしてもオナニーカルチャーの移り変わりには目を見張るものがございます。
現代のティーンズは、おそらく自慰初めが動画スタートという方々も少なくないのでは、と考えます。
鮮明な性交映像が視覚と聴覚を刺激し、"受け身"の態勢でエロを浴びる。
これは、他人が作った性幻想の具現をなぞるだけであります。
とはいえ、私も動画の恩恵にあずかっている身ではございますが、股間は変形するも脳に響かないという、ブレインインポテンツの状態に悩む今日このごろ。

かつて。
公園に落ちていたカピカピのエロ本をめくり、動かない裸写真からいかにして女体を踊らせるかに集中したわんぱく時代。
ドラゴンボール3巻に出てきたブルマのおっぱいにサティスファイしたハングリー精神。
あの頃の伸びやかなる想像力と陰茎力はどこへいってしまったのか!
マスターベーションは、哀しきララバイ。

加齢だよバカ、本格的インポテンツの初期症状だウンコ野郎、と言われればそれまででございます。
ただ、経験を積み重ねることは大事ですが、それと引き換えに新鮮さと刺激は失われるものでございます。

ずいぶんと前置きが長くなってしまいましたが、たまには小説を。


『エロ事師たち』野坂昭如 1963年
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けっこう有名な本なので、ご存知の方も多いと存じます。
新潮文庫の旧版の表紙が最もクールであります。
この本は官能小説ではございません。

舞台は1960年代初頭の大阪。
まだAVなどなく、エロ写真や盗聴エロテープが全盛で、ヘルスがトルコ風呂といわれていた時代。
浪花節で猛進するエロを商売とした泣きと笑いの人情物語であります。


【主な登場人物】

〈スブやん〉
世に氾濫する性の餓鬼を相手に盗聴テープやブルーフィルム、エロ写真の販売、さらには偽装処女を売る処女屋、果ては乱交パーティーのプロデュース、とエロビジネスを繰り広げるエロ事師。

〈伴的〉
スブやんの相棒。
敏腕カメラマン。

〈ゴキ〉
ブルーフィルムの運び屋。
池のほとりにある6畳の小屋に住んでいる。
箱にゴキブリを飼ってそれを観賞しながら焼酎を飲み、春日八郎を聴くのが幸せな48歳。

〈カキヤ〉
元エロ本書き。
ペンキ屋の2階で4畳半住まい。
自分で書いた官能小説にしか勃起しない。
オナニーの最中に心臓麻痺で死去。

〈カボー〉
団地の屋上のタンクそばで野宿をしていた超イケメン。
主に乱交パーティー女性要員勧誘として動く。
ダッチワイフにしか興奮しない童貞。


この物語には生々しい性の描写は皆目見あたらないので、女性の方でも安心して読めると思います。

魅力は全編を包み込む青い霧のような昭和のエロティシズム。
SM写真が、あたかもホラーとしても見てとれた時代。
エロ事業が現代のようなライトタッチでポップな地位になく、地下でうごめく裏稼業で、限られた人しか手に触れることのできない淫靡と狂気が混在しております。
そして、その暗雲のなかで、時折差し込むあたたかい人情。
ここが肝なのであります。
完全個人行動で手に入るエロソースではなく、多くの人の手を渡り、あらゆるルートを経て、ようやく辿り着くズリネタ。
なんとかオカズを手に入れたいと必死になるサラリーマン、ニーズに応えるために奔走するエロ事師たち。
ここにある真剣勝負が、エロに輝きを与えます。

さらに詳細な内容は......
読んでいただくのが一番であります。
小説を読む際は、細かい感想などにいっさい目を通さずお読みになるのが得策だと思われます。
他人の余計な思想が介入すると、はなはだ興ざめしてしまいます。
ただ、最後は笑いながら涙がこぼれる、とだけ。

著者の野坂昭如は、『火垂るの墓』の作者でもあります。
大島渚をぶっ飛ばしたことでも有名ですね。
この二面性。
たまりません。


本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第百話 『菊門』

13/05/24

こんにちは、淡海です。
たいへんご無沙汰しておりました。

性交ができないと妄想が膨らむ、といった心境でございますゆえ。
山を登っていないだけに、山について書かせていただこうと思います。

西洋のアルピニズムにはチャレンジ精神が色濃く出ております。
登山はスポーツで、いかに高い山へ、いかに早く登るか?
すべてがそう、というわけではございませんが、達成と栄光、賞讃に重きをおくイメージが強いのであります。

一方、日本の登山はと申しますと、古来からの山岳信仰にみられるように、山は神仏そのものであり、"登頂"というものに重きを置かず、山を身体に刷り込ませることが真なり、という発想です。
その道程に注視し、山歩きと読経をシンクロさせていた部分があったのではないでしょうか。
ただ近代は、この精神は日本の欧米化とともに薄くなり、代わってトライな山登りが流れ込んできています。

さらに申しますと、西洋ポルノでは後背で男子がガッツポーズを決め、騎乗で女子はスポーティーにダンスします。
日本は、松葉くずし、乱れ牡丹、鶯の谷渡り、といった超自然をエロに見出します。
日本のフェティシズムの細分化は、世界随一でございましょう。

そんなことを考えておりますと、この本が、

【梅干と日本刀 ー日本人の知恵と独創の歴史ー】 1974年
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すこぶる面白いのであります。
日本人スピリットの教書であり、まさしく"大和"が記された大書です。
さらに、万巻のアウトドア書に匹敵するハウツー本でもあります。

さきほどの登山精神論ですが、この本の家屋の章を読むと相通ずるものがございました。

西洋家屋の多くは石材が使われており、とにかく頑丈な造りにして熱や寒気を遮断する、という自然を打ち負かす発想に基づいております。

四季があり、湿気と乾燥に襲われる日本はどうか?
純日本家屋は木材と土で家を造り、床には畳をしいて、家を呼吸させます。
湿度が高ければ家全体が膨張して外部からの湿気を防ぎ、乾燥すれば収縮して外から水分を運び入れます。
垣根に関しては、夏には葉をつけて熱い日射を遮り、冬には葉を落とし太陽光をダイレクトに家に届けます。
この自然を転がすアイデアはまさに驚異であります。
日本人はもともと農耕民族であり、自然の観察力は超鋭いです。
そして、征服ではなく順応する知恵に長けているのでございます。

その他にも本書のアウトドア的に役立ちそうな項目を挙げてみますと、

●ゾリンゲンのナイフに応用された日本刀の技術
● 蓑は日本の風土に適したレインコート
● 飢饉用の食料として植えられた彼岸花
● 柿本人麻呂は音から嵐を予兆した
● 魂の再生産を目的とした切腹の様式

最後の切腹の章がたいへん興味深かったので、ご紹介いたします。
一般的イメージとして切腹は、腹を短刀で一文字に引く。
そして苦痛を与えないように介錯人がすぐさま首を落とすといった段取りです。

はたして、いちばん壮絶な切腹はどのようなスタイルであったか?
本書にそれが記されていました。
1868年に起こった堺事件であります。
これは土佐藩士がフランス帝国水兵を殺傷した事件で、切腹命令を受けた箕浦猪之吉元章の切腹が凄まじいです。

まず、膝をついて前屈みになり、腹を十文字に引きます。
十文字に切ると、心臓や肺が胃に押されて横隔膜から下の内蔵が外へ出ます。
ここで介錯人が首を刎ねるところですが、箕浦は"待った"をかける。
大小腸関係を横に並べ、膵臓、腎臓、脾臓などは一カ所に固めて、飛び出た内蔵を自分で整理しはじめました。
そして血で辞世の句を書きはじめたのであります。
切腹は貧血死なので長い者で30分意識があるそうです。

さらに、箕浦はきれいに並べた内蔵をつかんで次々にフランス公使のリオン・ロッシュに投げつけたそうです。
リオン・ロッシュは恐怖のあまり、脳貧血で倒れました。
まさしく"肝の据わった"日本人を象徴するエピソードであります。

さて、私ごとではございますが、西国の山中にて農業に従事することと相成りました。

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今後は"山行革命"とともに、"山業革命"も合わせてお送りできればと思っています。

【歯車式陸用運搬係長】 "菊門"
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もうすぐ梅の収穫の季節です。
おいしい梅干ができることを期待しています。

第九十九話 『自炊法』

13/03/07

こんにちは、淡海です。

たいへんご無沙汰しておりました。
気がつけば半年ほど入山しておらず、
なにが山行革命だ! と、ヘソで茶を沸かされる御仁もいらっしゃるかと存じます。
謹んでお詫び申し上げます。

さて、また本です。
男のひとり暮らしにおいて、かならずブチ当たるミッション。
それは日々の食事であります。
工場のロボットが作り上げる食物だけを口へ運ぶことに、いささか不安を感じ、自炊にシフトしていくことに決めました。

さっそく、書店の料理本コーナーを見回してみると、
『節約100円レシピ』、『わずか10分!かんたんおかず』、
などといったタイトルがやたらと目につきます。

たしかに、低コストでイージーなのは、現代の世情にマッチしてると思われますが、"喰う"という男根的イメージから少しかけ離れている気がします。

もっと、ムキムキの、股ぐらからホルモンが垂れ落ちるような料理本が欲しい。
硬い芯の通った茎があり、そそり立つ根幹と、脈動する海綿組織。

そう、まさに漢のシンボルのような料理本を!

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丸元淑生著、『システム自炊法』です。
経済の泡が最高潮に膨れ上がった1990年に刊行。
好景気ならではの剛胆で痛快な内容にシビれました。

まず、築地へ行って、1本9000円のトキ鮭を買ってこいと記されています。
それを解体して冷凍庫に格納する。
さらに近海もののタラコを3キロ(12000円也)、これまた冷凍庫へ。
続いて、1キロ4000円のちりめんじゃこ、500グラム3800円の羅臼昆布、有機野菜などを買い揃え、鍋はステンレスの多重構造で25000円のものを使い、鰹節は高級かんなで削り、まな板は樹齢2000年の古代檜を。

まさに料亭なみの装備であります。
細々と食事を作る単身者に向けているとは、とうてい思えない沙汰で、完全労働者階級の私には、鼻血が出る内容でした。

しかし、このダンディズムはなんでしょう。
もはや料理なんかどうでもよくなり、丸元氏の割腹ぶりに興奮しました。

ひとつ、興味深いエピソードがありましたのでご紹介いたします。
冷や飯(玄米)についてです。
飯はアツアツの炊きたてがうまい、という定説に真っ向から反論しています。

冷たい飯に水を注ぎ、ゆっくりゆっくりと咀嚼する。
せめてお茶をかけたいところですが、お茶だと雑味が混じってしまうので、水でなければならないとのこと。
ゆっくり噛んでいると、うま味が全身を包み込み、だんだん身体が温まってくるそうです。
たしかに、熱い飯は口のなかにとどめておくことができず、早々に飲み込んでしまうので、真のうま味を体感できない気がします。
飯が冷たい分、味噌汁は舌が焼けるほどの温度がよいとされていました。
この冷熱発電のサイクルにハマると、温かい飯が食べられなくなるらしいですよ。

山で炊いた飯も冷たくなるのが必然。
しかし、冷や飯の向こう側を知り、舌に革命を起こすことによって、不利を有利に変えることができそうです。

本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第九十八話 『粕取』

13/01/23

こんにちは、淡海です。

本日は写真集をご紹介いたします。
もはや、山やアウトドアからどんどんかけ離れていきますが、自分の意識が流れるままに書き散らします。

【カストリ時代】 林忠彦 (1980)
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昭和21年、戦火のため生まれ変わりを余儀なくされた東京。
そこにはやがて雨後の筍のようにぬむぬむと闇市が出現した。
東京見物する進駐軍、シケモクする子供たち、GIに春を売るパンパン娘......。
林忠彦はそんな時代をカメラという刃で斬りとっていきます。

本書のタイトルにもなっているカストリとは、戦後の闇市で愛飲された粗悪な密造酒のことであり、少量で酔えるように、ときにはメチルアルコールを加えたそうです。
(目)が(散る)アルコール。
文字どおりこの狂酒によって失明する人が続出し、ときには命を奪います。
それでも呑む。呑む。呑む。
混沌と閉塞のなか、たとえ我が身が滅びようとも、呑み干す。
そしてしこたま酔う。

オールアッパーカットな写真がページを埋め尽くし、光芒を放つルポルタージュが進行します。
この本にあるのは、戦後の悲惨な情景ではなく、リセットされた日本から新しい文化を生み出していくエナジーほとばしる人間の姿であります。

ストーリーもエキサイティング。
ヒロポンを打って徹夜で写真を現像する著者は、ある日、ラッキーストライク(日の丸)を1本口にくわえただけで、米国ミリタリーポリスに捕まります。
万事休す、そこでGIがニヤニヤしながらポケットからなにかを取り出す。
その指先にはさまってるのはコンドーム。
『尺八しろ』
と迫られ、やがて著者は腹をくくる......。

といった調子です。
写真紙芝居じたての本書はノックアウトされるエピソードの宝庫でした。

ちなみに、当時は物資不足のため、やはり粗悪な材質の紙で刷られたエロやグロの雑誌が氾濫しており、それらはたいてい3号で廃刊に追い込まれたことから、
"3合(号)飲むとつぶれる"
とかけて、カストリ雑誌と呼ばれていたそうです。

最後に、本書に登場する写真を1枚。

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文豪、坂口安吾。

長時間の交渉の末、はじめて仕事部屋の撮影を許可されたときの貴重な1枚です。
雪崩をおこすゴミくずと吸い殻、そしてせんべいより薄い汗染みた万年床。
ドラム缶に入れたカストリをすくい、それを水で薄めてグビグビやりながら原稿を書き殴ったそうです。
近頃の作家さんは小綺麗でお洒落なかたが多いようですが、この写真の安吾は狂気。

得てして、こういった破滅的崩壊な環境から生まれる文学は鋭く美しいものであると思います。

本日は以上です。
次回もよろしくお願いします。

第九十七話 『二〇十三年』

13/01/02

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あけましておめでとうございます。
淡海です。
2013年ですね。

一昨年の正月に、

「なぜ山に登るのだ?」
『そこに山があるからだ』

という伝説的な名問答をご紹介しましたが、開高健がこのやり取りの核心をズドンと射抜いていたので、再び考察して書いてみます。

"そこに山があるからだ"という言葉は、はぐらかしの答えとして最高だ。
と開高は語ります。
つまり、無益でつまらないことを聞くでない、ということです。
"なぜ山に登るのだ?"という疑問の裏に、"私には理解できないのですが"という意識が存在します。
それを聞いた返答者は、山というものに疑問を持っている時点で、言葉で説明しても無駄なことを悟ります。

そして、打ち返した"そこに山があるからだ"という言葉。
質問に明確な答えを出さずして、さらに興味をそそるミステリアスさが香るからこそ名答となり得たのだと思います。
疑問を倍増させて反響させる、まさに合気道のような言葉であり、エフェクターでいうところのエンハンサーであります。
さらに言葉のなかに、体験しないと分からないよ、という誘惑も含まれているので、相手から能動的に山へ行くというアクションを起こさせる可能性を秘めています。
つっけんどんな答えかたの裏筋に、相手を効率的に引き込む要素が脈々と流れております。

ちょっと、いま脳がキリキリ痺れました。
慣れないことを書くもんじゃありませんね。
正月からカッタイ話ですいません。

とにかく私は、

なぜ野宿をするのか? そこに寝る余地があるからであります。

言葉の裏に何も含みたくありません。
ただそれだけです。
野宿はおもしろいです。

本日は以上です。
今年もよろしくお願いします!

第九十六話 『大月隠』

12/12/31

こんにちは、淡海です。

今日、コンビニで、

『カルビーポテトの塩味は、しょっぱい系って感じだけどぉ、
 プリングルスのサワクリは、超おいしい系って感じぃ。
 うんうん、じゃあサワクリ2本買ってくね。チャオ〜』

と、電話で話しているナイス&フレッシュな声とともに、風呂上がりの甘いシャンプーの香りが漂ってきたので、うむ、これはさぞかしビッチな...失礼、おてんばな娘さんであろうと、棚ごしに覗き込んでみると、スペースコブラに出てくるBARで、ポールダンサーが踊っている隣りの薄暗いカウンターに独りで座り、口から長い管を出して緑色のカクテルをすすっている宇宙人のような目をした、激豚刈り上げ頭の、"Heineken SINCE 1863"と大きくプリントされたパーカーを着た、60過ぎぐらいのオッサンみたいな面構えのオバハンでした。
己の聴覚の衰えを感じた年の瀬でございます。

たまには、アウトドアギアでも載せます。
軽いもの好きな人、集まれ〜!


【ESEE candiru】48g
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スクリーンショット(2012-12-31 1.25.46).png

ESEEというアメリカのサバイバルスクールがデザインしたナイフなんですが、これかっこいいですね。
いかにも危なそうなロゴマークが付いてるだけに、恐ろしいほど切れるらしいです。


【ROLLY BRUSH】0.3g
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とうとう歯ブラシも極限まできちゃったようです。
唾液で滑走するようなので、歩きながら歯を磨けますね。
パッケージのお姉さん、完全に目がいんでます。

【CAFE PRESS】18g
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ヘルイェア!
山ガールのみなさん、Tバックですよ。
これぞ軽量でしょう。

今年も最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
2012年は入山回数の少ない年でしたが、来年はもうちょっと山を歩こうかなと思ってます。

みなさま、よいお年を!

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